メガネ属性≠負け属性

アニメとか、ゲームとか、面白かったコンテンツについて言語化したい

ちゃんと紹介記事として成り立つ記事を書きたい(新世界より)

ついこないだ、新世界よりのアニメを観終わった。
原作からそこそこ評判は立っていて知ってはいたが、去年、機会が巡ってきたからようやく読んだという形である。
めちゃめちゃ面白かったからアニメも映像として観てみたくなったというわけ。

アニメは観る前に感じてたとおり映像化するには難しいお話だった。
 確かに雰囲気は出ていた。ところどころ演出として光っているものがあり文字だけでは出せない良さもあった。しかし、総合的には原作を上回ることはないだろう。既読後に観るには丁度いいくらい塩梅だ。
 なぜこの作品が映像化が難しかったのか…といつもならそのまま論じたくなる性分なのだが、今回は紹介記事である。
記事の趣旨とはズレてしまうのでいつもの自分はしまっておこうねー

作品紹介

この作品は文庫で上中下巻の3巻と長めの物語です。上巻は主人公の早季が12歳、中巻は14歳、下巻は26歳の時期という風に分かれています。

日本を舞台としているが、この現実の日本社会と似通っているけど決定的に異なる社会が形成されています。似ているけど何かが違う。そんな社会に不気味な違和感を覚えながら読者である私たちは読み進めていくこととなるでしょう。
 そして、早季たちは成長とともに自分たちの社会の真実を知ることとなります。社会の真実を知ることは、得てして欺瞞で形成された大人の世界を知ることと同意です。
 この真実によって物語全体には様々な疑念が立ち込めます。
 いままで、優しかったあの人は何を思ってあんなことを言ったのか?あの言い伝えは何を意味しているのか?あの教育にはどういう意図があったのか?等々
 「知識をつけて世界のことを理解できるようになること」と「信じていた世界に疑念が生まれること」が表裏一体になっている見せ方が非常に現実感があってうすら寒さすら覚えます。

この作品の面白さの一つは、早季たちが育っていく過程で社会ひいては世界について分かっていくことです。
 そのため、作品について紹介するうえで世界設定についての言及をできるだけ避けていかないと、物語体験を壊してしまう恐れがあるので紹介が難しくなっています…
 できるだけ体験が壊れないように注意を払って記事を書きますが、
ここまででこの作品を読む気になったのならこれ以降は読まずに「新世界より」読んだ方がいいのかもしれません。

新世界より 文庫 全3巻完結セット (講談社文庫)
 

 

 愛する早季へ(真理亜の手紙)

真理亜が早季へ宛てた別れの手紙を紹介します。

この引用は決定的なネタバレは省略して避けてはいるが、多少は推測できるようになっています。やはり、この文章を読んだ後はまっさらな状態で読むのとは異なった物語体験になってしまうかもしれませんが、物語をぼやっと見せることで興味を持ってもらおうという目的でこの文章を引用しました。
 それでは手紙の内容に移りましょう。

   愛する早季へ。

  あなたが、 この手紙を読むころには、わたしと守は、どこかずっと遠い場所にいるはずです。
 親友であり、恋人でもあったあなたに、まさか、こんな形で、別れの手紙を書かなければならないとは、思ってもみませんでした。本当に、本当に、ごめんなさい。

 早季と真理亜、他3人を含めた5人の幼馴染グループが中心となって物語を進みます。
 理由を語ると過度なネタバレにつながるので説明は省略しますが、この社会内では女同士、男同士が恋仲になったりすることは異端なことではないです。
実際に、5人の幼馴染グループの中では同時期にもう一つ同性カップルができています。
 守は幼馴染グループの一人で真理亜のことを好いている男の子です。真理亜(手紙中の「わたし」
)は守に好かれていることは分かっており、守の一番の理解者です。

 

(中略)

 わたしたち は、もはや、神栖66町で生きることはできません。町が、わたしたちが生きることを許さないのです。わたしだけなら、まだ、しばらく、だいじょうぶかもしれません。でも、守は、すでに、失格の烙印を押されてしまいました。一度、その烙印を押されると、もう、二度と、元には戻れないのです。こんなの、人間じゃなくて、不良品を選別するのと、同じやり方だと思わない?
 焼き物の窯を開けたとき、いびつだったり、ヒビが入ってたりした陶器は、打ち壊される運命にあります。わたしたちは、このまま、打ち壊されるのを待つくらいなら、先に何が待っていようと、逃げ出した方がましだ という結論に達しました。

  神栖66町は早季たちの住む町で茨城県に存在している設定です。実際にある地名としては1章では夏季キャンプで利根川に行ったり、6章では東京の地名が出てきます。

 

(中略)

  わたしたちには、もう一人、友がいました。今は、名前を思い出すことも許されない友が。彼、Xも、そんなときは、きっと、わたしたちを助けてくれたんじゃないでしょうか?
 だから、わたしは、今、守を助けなくてはなりませ ん。
  でも、あなたや覚に会えなくなることが、何より辛いのです。

 Xという男の子は、この手紙が出てくる一つ前の章で物語を退場しました。早季はXに密かな恋心を抱いていました。

 

(中略)

わたしたちには、さいわい、呪力という万能の道具があり、自然の中に放り出されても、何とか生きていくことができるはずです。曲がりなりにも、呪力を使いこなせるようになったという点だけは、わたしは、町と全人学級に対して、深く感謝しています。

(中略)

いつか、また、早季たちに会える日が来ることを、心の底から願っています。

 愛を込めて。あなたの真理亜。

新世界より 中巻 IV.冬の遠雷から引用)

 呪力というのはいわゆる超能力です。この呪力がこの作品世界を形作るすべてといっても過言でもないでしょう。
 全人学級とは、いわゆる学校みたいなものです。国語や算数の代わりに呪力の使い方を学びます。
 ここだけネタバレするとこれ以降、早季と真理亜は会えないです。

 

最後に

 どうでしょうか?少しでも興味を持っていただけでしょうか。

 この手紙で少し作品の雰囲気が伝わったかと思います。
 それと同時に多くの謎を感じたかと思います。この作品は世界観の設定がかなり練られており、これらの謎のほとんどは作品内で明かされます
 この設定の細かさはこの作品の世界が本当に存在するかのような錯覚を起こさせ、真実が語られる恐怖が身近に感じ、ぞっとします。

ほんの少しの紹介記事ですが、この記事で興味をもって読んでくれると嬉しいです。

今日の一枚

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某大学構内(夜)

この薄暗さ、物寂しい感じが新世界よりの世界にリンクする感じがしたのでこの写真をチョイスしました。しかし、大都市の中心でこんな写真を撮れるから大学構内って不思議な空間だなって思います。