メガネ属性≠負け属性

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超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか(批評のようななにか)

人は一人では生きられない。そんなのは誰だって知っている。では、人は何を求めて他人を求めるのか。

この作品は、宇宙を旅をする要塞マクロスという舞台で、他人(多種族まで含めて)と寄り添う意味を見つけ出すことに焦点を当てている。

本作の主人公である一条輝は軍人であるが、規律に従順ということはなく、どちらかというと反抗的な行動をとることが多い。物語の序盤、とっさに助けたリン・ミンメイには軍人として接することはほとんどなく、初っ端からサインをねだったりとファンとして、一条輝個人として接する。一条は戦うために望んで軍人になったというよりは、身寄りがなく生計を立てるために、生きるために手段として軍にいることが物語が進むにつれてだんだんと分かってくる。そういった一条の背景が明らかになると、人と深く関わることなかった一条輝というキャラクターの未熟な面がリアリティを持って見え隠れしてくる。

一方、リン・ミンメイは家から飛び出して、家族と縁を切ってまで歌手を夢見ていた少女である。しかし、アイドル歌手として有名になるにつれて、息苦しさを感じていた。そんな中、一条に命を助けられ、人の目から離れた3日間の日々過ごす。ミンメイにとって一条との出会いは芸能生活から解放される時間であり、一条に惹かれていく。

本作のダブルヒロインのもう一方である早瀬未沙は士官学校を首席で卒業し軍に所属する。早瀬は男性社会である軍という組織、仕事しかない女性の自分に揺れる、キャラクターである。敵、ゼントラーディの捕虜から脱出し一条と二人だけで荒廃しきった地球に降り立つ。二人は変わり果てた地球を調査という名の放浪生活を過ごし、自分たちを作り出した祖先プロトカルチャーの遺跡にたどり着く。早瀬は遺跡内にあった食器に家庭という日常を慈しみ、食事のひと時を思い描き、一条と気持ちを共有する。

一条は、憧れの存在だったミンメイにはじめは恋心を抱くが、地球での放浪生活を経て早瀬未沙と恋仲になる。彼ら彼女らはだれも一人では不完全な存在である。一条は人との関わり、家族を持たない。早瀬未沙は、軍人としての自分が家庭の日常を縛り付ける。そして、リン・ミンメイは一条同様家族を持たないが、夢のために自分で手放したものであり、一条に求めていたものは芸能生活からの解放である。それぞれの欠けているものをそう解釈すると、一条輝が憧れの存在であるリン・ミンメイではなく、家庭という日常を分かち合える早瀬未沙を選ぶのは必然であることが見えてくる。

このようにそれぞれの欠けていた部分が見えてくると、同時にすべての関係性がパズルのように補えることが明らかになる。本作では、敵であるゼントラーディもまた欠損を抱えて生きていることを描かれていることも大きな特徴である。ゼントラーディは、不完全な存在であることが非常に分かりやすく描かれている(もう一方の敵勢力であるメルトランディもまた同様に)。彼ら彼女らはまず性別というものが欠けている。それぞれ一方の性のみで構成されており、もう一方の性であるメルトランディまたは、ゼントラーディと戦い続ける存在である。そして、戦うことしか知らない彼らは、男女が同じところで生活し、様々な文化を持つマクロスと戦いながらも興味を抱き、捕虜になったリン・ミンメイの「歌」を通して欠落していた「文化」を見出し、求めるようになる。

それぞれの欠落を満たす場所(人)を見つけ出したとき共生の道が開かれ、リン・ミンメイは「愛・おぼえていますか」を歌い、物語の幕が閉じる。

このように本作は、不完全な人々が互いに寄り添うことで補いあう姿をSFオペラという舞台で描いた作品である。

今日の一枚


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離陸の瞬間。ブーン。

スマホの超広角レンズ使って撮ってみたけど、超広角レンズいいな。欲しくなる。