メガネ属性≠負け属性

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荒ぶる少女の乙女たちよ。ー生々しさをアニメで描く手法ー

言葉によって定義することで人は理解できないものを理解できるように努めるのだろう。
「荒ぶる季節乙女どもよ。」は、思春期に起こる感情の変化を文学部に所属する5人の女子高校生が定義して理解する物語である。

批評

思春期
青年期の前期。第二次性徴が現れ、生殖が可能となって、精神的にも大きな変化の現れる時期。ふつう12歳から17歳ごろまでをいう。春機発動期。
(デジタル大辞林より引用 https://kotobank.jp/word/%E6%80%9D%E6%98%A5%E6%9C%9F-519324)

高校時代の15~17歳という年齢は子孫を残すことができるようになる。つまり親になることができ、生物学的には大人といえる年齢である。
しかしながら、社会が高度に複雑化するにつれてヒトという生物社会では15~17歳は大人になったとは認められなくなった。
思春期とは生物学的に大人である自分と社会的に子供である自分の間で起こるズレによっておこる変化である。

「性欲と感情は別」という持論を掲げる菅原新菜の言葉が理解できない和紗に対して、菅原新菜は「鶏を締めることは鶏肉を食べるまでの過程の中に存在するけど、鶏肉が好きなことと関係はないでしょ」と語る。
異性を好きになることの延長に「えすいばつ(SEX)」がたしかに存在するし、子どもを持つ親はみな「えすいばつ」という過程がある。
大人は隠したがっているけど、当たり前に存在する事実―ヒトという生物の生々しさ―に直面し思い悩む姿を本作は描いている。


アニメというのは、「生物的な生々しさ」をリアルに描くのは基本的に苦手である。
それは、やはりアニメは2次元の絵を動かすことで成り立つ媒体だからである。
どれだけアニメが進歩しようとも、現実の人の演じる実写ドラマにこの点に関して上回ることが難しいであろう。
「生々しさ」で実写に追いつけるとしたら、3次元寄りの表現方法であるフルCGアニメーションだと思う。

少し話が逸れたが、本作は思春期という言葉の定義そのままに「性」と真正面から向き合っている。
「性」を避けずに年頃の男女をアニメで描くという難題に対して、本作は「文学」に頼ることで解決しようとした。
文学はアニメショーンなどの映像作品に比べて、情報量の少ない媒体である。
一方で、「生物的な生々しさ」に関してはアニメよりは描写が得意な媒体でもある。
それは、情報の少なさゆえに受け手側に描写を想像することを委ねるからである。
つまり、文学作品においては「生物的な生々しさ」を受け手側の想像力に手伝ってもらうことで表現している。
同様に本作も、直接的な描写をすることなく、セリフ回しや行動から「えすいばつ」を想起させるという文学の手法を真似ている。

和紗は幼馴染の自慰行為を見てから、頭の中は「えすいばつ」に囚われてしまう。
優しそうな保険室の先生が赤ちゃんを産んだということに対しても、赤ちゃんができる過程を思い浮かべずにはいられない。
家にいれば普段ぼんやりしている自分の母にもそういったことをした経験があることを考えてしまう。
このような描写から、受け手側は「生物的な生々しさ」に対する嫌悪を想起させれられる。
この手法は、自分の経験を土台に想像することで物語を味わう文学的な手法に他ならない。

こうした文学を軸に「思春期」を切り取った本作は最後に、自分の内で荒ぶる感情を色をよすがに言葉に表現する儀式(いろ鬼)を行う。
彼女たちは自分たちの中で荒ぶってた感情に名前をつけるのである。
理解できないものに対して言葉で表現、定義することで理解を促すことができる。
そのため、名前をつけられた感情は自分の中で理解し消化され物語は終わりを迎える。
本作は「性」を排除せずに「思春期」を克明に描ききった作品なのである。

感想

岡田磨里の作品に関しては、基本的に評価が甘々すぎるのは自覚しているよ
いやぁでも、「荒ぶる季節乙女どもよ。」と「空の青さを知る人よ」って立て続けに良いものをみせられたら
こりゃもう
手放しに絶賛せずにはいられないわ
荒ぶる季節乙女どもよ。は描くのが難しいと思うような領域に踏み込んでちゃんと青春アニメに昇華しているし
空の青さを知る人よ はアラサーって微妙な年齢の機微を鮮やかに描いちゃうんだもんな。最高
しかし、作品全体を好きになるのに主人公を好きになるって大事な要素だよな
相生あおい、今年観た作品の中でもかなり上位に来るぐらい好きな主人公
やばいもんな。この秋太眉が来てるわ!
不満を隠さない意志の強そうな太眉すっごい良い
なのに、めっちゃ素直な子なの可愛い
ガンダーラを演奏するシーンはあおいの魅力が詰まっている
好き

今日の一枚

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こういう題材でもう少し印象的な写真を撮ってみたいんだよね
小さな、ミクロの世界を覗き込んだような世界観を感じるような写真をさ