ボーイ・ミーツ・ガールから始まり、ダブルヒロイン、ハーレムもの…1作品内にたくさんのヒロインを据えることで幅広いニーズに応えることができる。オタク業界において恋愛もののハーレム展開は作品自体の人気を獲得するための1つの戦略なのである。
しかし、多くの人気ヒロインを抱える作品でも、最後には一人のヒロインを選ばなくてはならない。ヒロインレースの勝者が決まってしまうと、
なぜか作品の人気が下がる。
更にけじめをつけるという名の敗戦処理描写が始まると、
なぜかアンチが増えるという不思議な現象が起こる。
もちろん人気が下がるのも負けヒロインのファンが逃げたからだし、アンチは応援していたヒロインの
この事態を避けるために、昨今のライトノベルではヒロインレースに発展する前に1巻でヒロインと付き合いを始めてから、サブヒロインを出すなどの展開で回避している。
つまり、
ライトノベルおいて正妻戦争は非常にデリケートで繊細な物語の人気に直結する最大最強の問題だということをなんだよ!!!
ということで
「冴えない
「冴えない
安芸倫也がサークルを立ち上げギャルゲー作りをすることを縦軸、
メインヒロインの加藤恵は安芸倫也がゲームを作るきっかけの「桜舞い散る坂道で出会った少女」である。しかし、実際の彼女は普通に可愛くて気軽に喋りやすい、これといった
この加藤恵をどのようにして誰もが胸がきゅんきゅんするメインヒロインにしたのかを紐解いていこうと思う。
作者は物語上のメインヒロインに人気が出てほしいものなんだよ
物語上のメインヒロインとは、その物語の軸として中心として描かれる女性キャラクターのことである。作品の軸によっては恋愛の勝ち負けと直接イコールで結びつくものではない。
では、「冴えない
安芸倫也の幼馴染にして、作中で安芸倫也との8年の断絶を乗り越えた金髪ツインテール、澤村・スペンサー英莉々であろうか。
安芸倫也の憧れの推し作家にして、シナリオライターとしての師匠になる黒髪ロング先輩の霞ヶ丘詩羽であろうか。
いや違う。
ゲーム制作において裏方に徹し、サークル内で安芸倫也と他のヒロインとの衝突を解決する手助けをしたり、常に物語の中心で
読み手にとっては自分の応援するヒロインがメインヒロインになるんだよ!
作中の動きから加藤恵がメインヒロインであることは認めよう。
読み手の
どうしてこんなに加藤恵に胸をきゅんきゅんさせられたのか。
確かに、あのすっとぼけた反応、抑揚の少ないしゃべり方、
強引にゲームをさせられて果ては男の子の家に徹夜しちゃうハードルの低さ、
なのに、まったくそういう展開にならない異常なまでの友達感覚、
いや、しかし、加藤恵はある程度のことならホイホイ誘いに乗るように押せば行ける感じはあるけどそうはならない。
このよくわからなさが面白いんだ。
ほら、考えてみろ
プロット書くのに詰まっている安芸倫也助けるためにわざわざ北海道旅行を切り上げてくる。
え?なんで?
従兄と出かけるのがメインヒロイン失格と言われれば、代わりに安芸倫也とお出かけしたり。
え?なんで?
ゲーム作りに興味なさそうにスマホをいじっているかと思えばいつの間にかスクリプトの勉強してたり。
え?なんで?
なんでもないようにフラットに接しているようで、意外と協力的で困惑させる。
分かりやすそうだけど、ホントの内面は見えないから、
え?なんで?って、内面を知りたくなる魅力がある。
それにさ、物語が進むんで行くとにちょっとずつ加藤恵のリアクションに変化が見えてくるんだ
この「ちょっとずつ」というのがとても良い塩梅だ
一緒に共感しながら読み進めることができる。突き放されることがない
突き放されることがないから、一緒に歩くように、寄り添うように物語を歩んでいける
そして、クライマックスの間際で
感無量である。
なるほど、内面の読めなさ具合とちょっとずつ変わっていく彼女の様子が
加藤恵のメインヒロインの魅力、
つまり、胸きゅんポイントなのだろう。
今日の一枚