メガネ属性≠負け属性

アニメとか、ゲームとか、面白かったコンテンツについて言語化したい

ラブライブ!虹ヶ咲スクールアイドル同好会 -こだわり続ける3DCGと作画のハイブリッド映像の先に-

 アニメーションの基礎とも言える「動き」が主役となるダンスシーンは、作品の見せ場となるシーンとなる傾向がある。そのため、多くの作品でハイクオリティな映像にするため力が注がれる。特に、「アイドルもの」作品においては扇の要にさえなりうる。
 『ラブライブ!虹ヶ咲スクールアイドル同好会』もそういった作品群の一つである。

3DCGと作画のハイブリッド映像

 『ラブライブ!虹ヶ咲スクールアイドル同好会』はその名の通り、ラブライブシリーズの作品。3作目にあたる。ラブライブシリーズでは、ダンスシーンで3DCGと作画を使い分けて描くことにプロジェクトの初期から一貫してこだわっている。しかし、いくらセルルックの手法が習熟してきたとは言え、3DCGと作画ではそれぞれ作り方の違いから絵柄のタッチなどが変わってしまうため、一つシーンとしての統一感が失われてしまうという大きな欠点がある。
 それでもラブライブシリーズがプロジェクト初期から3DCGと作画を混ぜたダンスシーンを作ってきたのは、それぞれにそれぞれの長所があるからだ。

3DCGの強み

 3DCGは「空間」に配置したキャラクターの3Dモデルに動きをつけて映像が作られる。キャラクターが踊る場から作り上げられていくため、ダンスをするキャラクターの周りをぐるっと立体的に撮るカメラワークは3DCGの得意とする領域だ。その他にも、キャラクターの全身を魅せるようなアングルや、ダンスフォーメーションを活かしたカットなど、アイドルがそこにいるという存在感を出すことを3DCGという表現技法は得意とする。
 また、ダンスシーンを映し出したスクリーンをバックに声優が踊るリアルライブを行うラブライブシリーズにおいて、映像との一体感を演出するのにも3DCGパートの引いた映像は一役買っていることを付け加えておこう。

作画の強み

 一方で3DCGが苦手とするのはキャラクターに寄ったアングルである。近づくことで顔のパーツの立体感を表現するのが困難なだけでなく、柔らかい表情の変化をつけることも難しい。これを作画は補うことができる。作画は立体的なカメラワークが苦手だが、細やかな表情芝居やメリハリをつけた動きなど、アニメとして見ていて気持ちの良い動きを追求することができる。そのため、作画パートが入ることで3DCGのみでは単調になりやすい映像に躍動感が生まれる。
 また、物語の中で挿入されるダンスシーンに重要なのは物語との融和である。この融和を上手く成り立たせることで視聴者に強いエモーションを与えることができる。それには細やかな表情芝居をつけられる作画パートが活きる場面である事は間違いないが、融和を成り立たせる上で最も重要なのは物語そのものである。

「ソロアイドル」という選択

 本作『ラブライブ!虹ヶ咲スクールアイドル同好会』で特徴的なのはそれまでのラブライブシリーズにおけるお約束をいくつか外してきている。それは、学校が廃校の危機にない点、スクールアイドルの甲子園「ラブライブ!」を目指さない点、そして、グループ活動をせずそれぞれがソロ活動をするという点である。
 これらのお約束を外したことで、これまでの部活のみんなで同じ目標を向かうストーリーから同好会メンバー個人の「アイドル活動の在り方」に軸足を置いた物語となった。物語の中で各キャラクターは同好会の活動や他のメンバーとの関係を通して「アイドル活動をする(したい)理由」や「舞台に立つ理由」、「表現したいもの」を積み上げ、ダンスシーンで積み上げてきた物語を昇華する構成というになっているのである。
 そして、3DCGパートでは「舞台に立つ理由」を見つけたアイドルがその舞台に立っているという存在感を伝え、作画パートで「アイドル活動をする理由」を見つけた高揚感を訴える映像を。あるいは、CG空間そのものと、作画パートのしぐさからそのアイドルらしさが全面に「表現された」映像を。
 このように3DCGと作画を駆使して、本作「ラブライブ!虹ヶ咲スクールアイドル同好会」はそれぞれのキャラクターがアイドルとして輝けるダンスシーンを演出しているのである。

今日の一枚

f:id:wanwanfever:20201204203551j:plain
三方五湖のロープウェイを上った先で見つけた貸し傘。
カラフルな傘がたくさん並んでておっ、と思ってシャッターを切った。