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そにアニ -SUPER SONICO THE ANIMATION-第7話 スターレイン -旅の記憶は人とともにあり-

広々とした田園風景の中、軽トラの走るエンジン音とそに子が口ずさむ鼻歌だけがあたりの空気を震わせる。そんな田舎情緒あふれる一幕から始まるそにアニ第7話「スターレイン」では、珍しく地元新潟の風景が描かれている。
作詞をしながら一人旅をするそに子を描いたこの話は、池袋の東武から深夜バスに乗り、新潟市に到着し、そこから胎内市街、胎内温泉の旅館、最後に山奥にある星の展望台と旅をする。そして、ED曲には旅の中で作詞された「スターレイン」が流れる。旅を通して作られた歌詞は、やはり、そに子の旅をフラッシュバックさせ、なんとも旅情をかきたてる。


この話において白眉なのは、人との出会いを配することで、旅中で次々と流れていく風景を「旅の記憶」として留めている点である。
まず深夜バス。隣の席の女性が高速のS.Aの休憩中に電話越しに怒っていた姿を見かける。深夜バスを降りるとその女性が待っていた男性に抱き着くシーンを見かける。新潟駅では電車を待っているうちにうたたねしてしまい、車掌さんに声をかけられる。胎内市街に着いて雨宿りしていると、ガラス職人の女性に話しかけられ、ガラス細工の体験をさせてもらう。胎内温泉にむかう途中、農作業していた老夫婦に道を尋ねた折、スイカを分けてもらう。そして、星の展望台ではそこに居た子どもに手を引かれ一緒に座って星を眺める。旅の行き先で誰かに出会うことで、そのひとつひとつの風景にエピソードができる。
ただ、これでは散発的にエピソードが挿入されるだけでひとつの物語としてまとまりがない。これらを繋ぎ合わせる役割として、ED曲「スターレイン」機能する。EDのまとめとしてもそうだが、本編中でも曲のフレーズがそに子の口ずさむ鼻歌として、あるいは劇伴としてリフレインする。これによって、それぞれ人の出会いのエピソードが散漫にならずに、ひとつの旅としてのまとまり感が生まれる。だからこそ、そにアニ第7話「スターレイン」は30分の短い時間のなかで一人旅の雰囲気を十二分に味わうことができるのだ。



後記

今では聖地巡礼という言葉が、アニメの舞台を巡るという意味で使われるケースの方が多くなっている。しかし、マンガ・アニメのまちを謳う新潟市だが、メイン舞台にしたテレビアニメは未だにない。
電車を待って新潟駅のプラットフォームでうたたねしたそに子の後ろには工事の衝立が映っている。
新潟駅は10年以上かけて、今現在も工事が続いている。地上を走っていた在来線を高架化して、分断されていた駅の入り口を地上で繋げるためだ。すでに在来線のほとんどは高架化されており、のこり1番線を完成させた後、仮設で設置されていた8,9番線を廃止することで完了する。高架化が完了すると、次は新潟駅の表口である万代口の整備に入る。こちらもすでに駅舎は解体が始まっている。
工事が進むにつれて新潟駅はきれいになっている。駅のホームは広くなり、天井も高くなった。あの入り口からにおう公衆トイレももうない。工事が完了すればよりアクセスしやすい便利な駅になるのだろう。
しかし、見慣れた駅の姿が少しずつなくなっていく中に一抹の寂しさを覚えないか、と言われれば嘘になる。そんな変わる前の、変わっていく最中にある新潟駅の姿を映した、そにアニ第7話があったことは記憶にとどめておきたいと思うのである。

今日の一枚

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ある日の新潟駅