メガネ属性≠負け属性

アニメとか、ゲームとか、面白かったコンテンツについて言語化したい

とてもつまらない思い出話(シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇 感想)

ずっと、距離を測り続けてたのかもしれない。



小学1,2年のころ、水曜だけ自分よりも早く父親が帰っていた。
今考えると、一体どういう仕事の形体なのかまったく見当もつかないが、
ともかく水曜日は学校から帰ると父がいて、
VHSに録画したガンダムや、パトレイバーを観ていた。

エヴァというものを初めて認識したのも、学校から帰った水曜日だった。
その日も帰ると父がいて、テレビを見ていた。
多分その日は寒い日だったのだろう。
去年までバリバリ現役だった石油ストーブ、
4歳のころお尻をやけどした
あの石油ストーブのにおいがリビングに立ち込めていた。

テレビには、ずんぐりとしていて不格好な白いロボットとスタイリッシュでカッコいい紫色のロボットが映っていた。
ズンズンと白いロボットが歩くのを紫色のロボットが背中に引っ付いて止めている。
テレビが一台しかない我が家は父親がいる水曜日は必然テレビゲームができない。
普段は代わりにマンガやゲームボーイなどを興じていたが、
その日は父親と一緒にエヴァを観た。
エヴァの絵の力、アニメーションの魅力に惹かれていたのかもしれない。
新世紀エヴァンゲリオン 第七話 人の造りしもの』だった。



そこから、能動的にエヴァを全話視聴したのは数年後、小学校高学年になってからだ。
確かあれは夏休み明けだったように思う。
なにがきっかけだったか全く覚えていない。
ビデオデッキが壊れて、HDDレコーダーを買ったのがきっかけだったのかもしれない。
とにかく、その時初めてエヴァを観た。

父の観ていた、
エヴァの録画された4つの、
『瞬間、心、重ねて』の特訓の途中で
1巻から2巻に移るVHSで。

学校から帰っては夕飯の時間までVHSを流し、
食い入るようにしてテレビを眺めた。
恐ろしさと迫力に満ちた初号機の暴走シーン、
使途が現れると防塞都市に変貌する第三新東京市
NERV内部の緊迫感にワクワクに心躍らせた。
だけど、最後の2話はVHSの録画が失敗しているのかと思うほど訳が分からなくて退屈だったし、ディスコミュニケーションによってこじれていく人間模様は上手く咀嚼できなかった。
それでもエヴァは面白かった。



それからしばらくして、
家の本棚でエヴァの解説本(今思うと考察本だったのかもしれない)なるものを見つけた。
たかが、いちアニメシリーズに数百ページにわたってびっしりと活字が並ぶ本が出版されていることに驚いた記憶がある。
それを見つけた自分は、ドキドキしながら読み始めた。
各話のどこがどう面白いのかなど解説されているのだろうと思っていたのだ。
しかし、中にはリリスだとか、リリンだとか、死海文書、新死海文書といった設定についての解説がつらつらと書かれていた。
小難しい単語がつらつら並び読み進めていくうちにぼんやりと理解できたものの、
自分の感じたエヴァの面白さとはかけ離れていたことに心底ガッカリした。

そんな固有名詞をバンバン使わなければ説明できないようなものじゃないだろう、と。
あえて小難しく書いて賢しらに見せようとするオナニーだ、と。

多分ここまでだろう、能動的にエヴァに触れようとしたのは。



中学生の時に『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』が、高校で『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』が公開された。
観たいという意志をもって行った覚えがない。
ただ、父や姉が観に行こうといったから行っただけだった。
そのままずっとずっと引きずっていた。
肥大化した自意識に押しつぶされていたのかもしれない。
ずっと距離を測っていた、エヴァと自分、周りのエヴァが好きだという同級生や家族、画面の向こうのエヴァオタクと。
そうすると、やっぱりどうも熱量が足りなかった。
好きといえるほどの熱量はどこかに霧散していた。
みんなを不理解の底に落とした『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』は
ある意味で福音だったのかもしれない。
でも、もう惰性が勝っていた。



ずっとずっと距離を測ろうとして、測りかねていたんだ。
でも、どこか倒錯していた。
でも、倒錯していることにだって気づいていた。
でも、自分の中で熱を生み出せなかったんだ。



それから『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』から8年、
今回の『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』を実績解除のために観た。
いや、他人の熱量を寄る辺にして、あてられて観に行った。
フィルムの中では、庵野監督が当初言っていた繰り返しの物語が描かれていた。
繰り返し繰り返し、傷つきながらも他人に手を差し伸べる物語だ。
それは作品から、庵野監督から、我々観客へ手が差し伸べられているように思えた。
2時間半にも及ぶ長い長い上映時間は、
エヴァと一対一で向き合う極上の時間だった。
エヴァの呪縛から解き放たれるには十分すぎる時間だった。
あぁ、この手を取っても良いのかもしれない。そう感じた。
さらば、すべてのエヴァンゲリオン
そして、ありがとう。



メガネ属性に時代の流れをくれてありがとう。