メガネ属性≠負け属性

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ミュージカル 本好きの下剋上を観てきました

今年になって原作を読みだし、みるみるうちにハマった『本好きの下剋上』でミュージカルとして舞台化された。
情報が解禁された当初は正直、興味を持てないでいた。
しかし、先週から公演が始まり、原作者含め楽しんでいるようすが伝わる感想が目に入ってくるにつれて、徐々に興味を持ち始めた。
ミュージカル、女性ファンを中心に盛りあがり、メディアミックスの1つの形態として受け入れられて等しい。
こんな機会でもなければ一生ミュージカルを体験することはないだろう。知らない世界に飛び込むのも面白そうだとふと思い立ち突発的に12日夜の回のチケットを購入、高速バスを予約して観に行った。

実際観てみての感想だが、体感6割くらい歌って踊っていて、サクサク進む物語は歯切れがよくあっという間の3時間に過ぎていった。
始まってすぐたくさんの人が出てきたと思ったら歌い踊り、下町の暮らしを説明するミュージカルが始まる。
役者のひとたちがくたびれた衣服をまとった姿はマインが暮らす下町の暮らしを想起させ、舞台の上はもうエーレンフェストの中なんだな..という感覚が自然と湧いてきた。

マインが麗乃としての意識を覚醒させてから神殿に入るまでの物語、原作の第1部『兵士の娘』にあたる部分を描いている。
本好きの下剋上』はいわゆる異世界転生もののフォーマットで始まる物語。
その他の異世界転生の例に漏れず中世を基盤としたような魔法が存在するファンタジーな世界だが、第1部はファンタジー要素は少なくむしろ下町での貧民の生活の描写が一つ特徴的だ。
貧民の家に生まれたマインの埃だらけの部屋から始まり継ぎはぎだらけの衣服など、衣食住から現代日本との衛生観念・常識の違いが克明に描かれている。
衣装の造形のさることながらこれを実際の人間が着ることによって、物語の世界に誘うには十分な説得力が生まれていた。
また、第一部はマインの家族やルッツなど下町の、特に貧民のひとが多く登場するが、途中からベンノやフリーダなど商人とも関わるようになる。
それらの人達と身にまとう衣服や清潔感など身なりの違いで、身分の違いが分かる描写も多い。
衣服の上等さでその人の身分を推しはからせるというのはアニメで表現するのは難しいところであったが、使われている生地の違いやくたびれていたり汚れが強かったり並ぶと身なりの違いがよくわかるようになっているのは実物があるミュージカルの強みが感じ取れる。
特に、序盤から登場するオットーはミュージカルシーンで初めて登場するが、清潔感のある服装で出てきた瞬間からパッと目が向くような違いがあった。
というかオットーさん、ミュージカルシーンでアクロバティックなダンスを披露していてめちゃくちゃカッコ良くないですか?
その後も明らかにオットーさんのダンスは目を引く派手さで、今回はコリンナさんも出てこないからコリンナさんが絡んだ時のめんどくささもなくて、否の付け所がないキャラクターじゃない?
そうそう衣装と言えば、ずっと継ぎはぎだらけの衣装から、ラストにサプライズのように青色巫女見習いの装束で現れるマインもまた絵から飛び出してきたような感動が強く印象に残ったシーンだった。

他にも、ギュンターやオットーがマインを片腕で抱き上げて肩に乗せる動き。第1部、第2部でマインが下町をあちこち移動するときの基本のフォーメーションとしてよく見るアレだ。
実際にあの状態で下町動き回るのは大変だろうけど、スッと持ち上げられるマインのお人形さんっぷりが可愛らしくて良かった。
それに何といっても第1部はマインが異世界の家族からたくさんの愛情を受けて、本よりも大事な存在になっていく変化も描いているので、ギュンターやエーファ、トゥーリの4人が揃って舞台に実際に存在しているときの感慨は深いものがあり、
3巻の表紙絵から飛び出てきたような写って見えた。公演の後半にもなると舞台の小道具で次にどこのシーンに移るか分かるようになるけど、おっ!ギュンター家のテーブルとイスだな!って嬉しくなるときが出てくるもんね。

単純に歌や踊りの力は大きく、次から次へ何人もの役者が入れ代わり立ち代わりで舞台を舞っている姿は目が楽しい。
加えて、文字の上で紡がれていた世界が舞台の上でも現出した魔法のような時間であり、変えがたい体験があることを実感した。
ただミュージカルのために東京へ行くというのは少々大変なので、今後続いたとしてまた鑑賞しに行くかは分からないかな...

今日の一枚