メガネ属性≠負け属性

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第2回新潟国際アニメーション映画祭 参加レポート

3月15日から20日開催された第2回新潟国際アニメーション映画祭に今年も参加してきた。
参加したのは16日から19日の3日間。
niigata-iaff.net

去年の記事はこちら。
wanwanfever.hatenablog.jp



コンペティション作品は12作品中4作品鑑賞、その他に4つのイベント上映等に参加した。
去年は、映画祭というものがどんな雰囲気なのか分からないまま飛び込んだので、ほとんどコンペティション作品は観れていなかったが、今年は興味のあるトークイベント、イベント上映を中心に空いた時間にコンペティション作品を観るという形でスケジュールを組んで。プログラムごとに感想を書いていこうと思う。

3月16日(土)

オン・ザ・ブリッジ(コンペティション

まず、鑑賞したのはオン・ザ・ブリッジ。コンペティション作品のスクリーンショットを見て、油絵?基調の絵柄と橋の上に佇む列車のスクショがクールで興味を抱き鑑賞を決めた。今回鑑賞したコンペティション作品の中でも異様な作品だった。
この作品は、実際にホスピスなど死期が近づいている人たちが会話を録音したものをそのまま音声素材として作られたそうです。実際にはただ会話しているものですが、作中では列車に乗り合わせた乗客たちという形に仕立て物語が進んでいく。なので、長編アニメーションという形をとっているがシーンとシーンを繋がりは存在せず、訥々と乗客が思い思いに会話しているシーンが続いていく。そして、列車は橋の中腹に差し掛かると急停車して崩れ始める。乗客はその場に留まろうするものや、橋の上を歩き始めるものなどそれぞれバラバラになっていき最後にはその橋も崩れるといった筋書き。
とりとめもない茫漠とした会話がひたすら続き、その会話の中から様々な人生や死生観がこれまたぼんやりと浮かび上がっきたのを覚えている。
退屈な作品だったが、本作は「生」をテーマに製作したとのことで、制作物、アートとしてテーマに対してしっかりと作り上げられ、確かにそれに成功しており舌を巻く。まったく商業作品とかけ離れていて面を食らいましたが、中々お目にかかれないものを観たぞという感覚もあり、非常に興味深い作品だった。ビジュアルも含めて、昨年プレイした「SEASON: A Letter to the Future」という作品を思い出した。

スルタナの夢(コンペティション

こちらはフェミニスト小説「スルタナの夢」を偶然目にした主人公が小説内で描かれているような女性が平和に暮らせる地を探す旅を描いた作品。明示的に描かれていないけど、複葉機が飛んでいたシーンがあったから1900年代前半あたりの時代かな。海外の社会情勢は明るくないですが、何となくそう見た方がしっくりくる。こちらは切り絵風のビジュアルが特徴的。
何というか私小説的で、敢えてなのかもしれないけど主人公と距離を感じてしまい、中々入り込みずらい作品だなと思った。
多分、こういう形の建付けのストーリーはゲームの方がメッセージ伝わりそうだな。

機動戦士ガンダム 逆襲のシャア(イベント上映)

このプログラムは即日完売、チケット販売から30分でもう8割埋まっててだいぶ焦りましたが、確保できて良かった。この人気ぶりは流石。富野監督と出渕裕さんのトークが始まり、のっけから冨野監督のトークが止まらず面白かった。それと、隙あらばGレコを宣伝する富野監督が良かった。


3月17日(日)

マーズ・エクスプレス(コンペティション

まず猫が毛づくろいをしてからベッドにひょいと跳びあがる。飼い主が猫に少しジェスチャーをすると、猫の皮が剥がれて中身の機械フレームが露わになる。この最初のシーンからグッとつかまされる。大筋は私立探偵とアンドロイドのバディものではあるけど、アンドロイドは元は生きた人間の意識の複製であったりして、設定周りだけでも十分に想像力を掻き立てられるようなSFだった。複雑なSF設定と物語を1時間半の中でうまく詰め込まれてるのも見事でした。
字幕という事もあってストーリーに着いていくの必死だったんだけど、人の顔が一致しない部分もあったので、もう一度落ち着いて観たいですね。

マントラ・ウォーリアー ~8つの月の伝説~(コンペティション

CGのクオリティがすごい。フルCGだけど、一部エフェクトを作画でやっているのは珍しいなと思ったけど、これがなかなかどうしてこなれている。しかし、しかし...話は...つまらなくないし、畳みかけるような展開で退屈もしないけど、どこかで見たような感じ、というか全体的に安い。ラクサマンのギャグは完全に滑ってる。このコンペティションの中で直球エンタメ作品は珍しいなとは思うけど、特にマーズ・エクスプレスを観た後だと普通にクオリティが低くてな...
トンチキアニメが好きな人は好きそう。

これからのドワーフ 20周年+α(イベント上映)

去年もドワーフトークイベントに参加したので、今年も思い参加した。
今年は、この20年間にこれまでドワーフが手掛けてきた作品を総ざらいする総集編のような映像を上映して、プロヂューサーのプロデューサーの松本紀子さんと監督の小川育さん、お二人のトークという流れ。
去年はこまねこの監督でどーもくんの生みの親の合田監督が来ていたが、今年は直近の作の「ポケモンコンシェルジュ」を手掛けた小川監督が来場。去年もでしたが、ドワーフのイベントはプロデュース側の人とクリエイター側の人がどっちも出てくるので、会社経営と作品づくりの両面から話が聞けるのが面白いと思う。松本さんのお話の中で「コマ撮りは褪せない。」という事をおっしゃっていたのが、なるほどと感じた。確かに、今回も初めにドワーフがこれまで作った作品を上映していたが、今の作品と比べても昔の作品が古臭いという感じがしないんですよ。だから、配信で昔の作品が見られるような時代ではコマ撮りはアドバンテージがあるのではという話。
小川監督の話は、実際の制作の流れについてのトーク内容。なんか勝手にこま撮りは複数班体制じゃないと思い込んでいたので、普通に複数班体制を敷いているのに驚きを覚えた。


3月18日(月)

岩井澤健治 アニメーションとしての映画表現(世界の潮流)

『ひな』のパイロットフィルム上映、カンヌで上映されて日本では初めてだとか。全然話は分からんがとにかく観てみたい!
この監督は、アニメで表現したくてアニメをしているわけじゃなくて、まだまだアニメは掘れる場所がたくさんあるからアニメを作っているとのことで、どちらかと言うと実写に近いの人なんだなという事が分かった。ロトスコは素材がそのままVコンテになるのが強みだそうで。特にロトスコに拘っているわけではないとのこと。他にも制作中のものあるそうで、こちらも楽しみ。


片渕須直監督 見え始めた「つるばみ色のなぎ子たち」の世界(トークイベント)

十二単の下は下着を着ているのか、平安時代の京都の清少納言が住んでたあたりは傾斜があっただとか、枕草子はいつ書いていたのかとか全くアニメを作っているはずなのにアニメを作っている話を聞いているような気がしない。清少納言が生きた時代の考証の進捗報告会のような。それでも、この交渉によって一番下の着物の線は要るのか要らないのが分かったって話に繋がって、あっアニメを描くためにこれをやってるんだったねって思い出す。
去年のトークでも感じたけど、画面の中にその時代を限りなく嘘をつかずに映し出そうとする姿勢に感嘆を覚える。
清少納言が生きた時代を限りなく正確に映し出された作品が出来上がるのを心待ちにしています。


まとめ

去年は日報ホールでこじんまりと開催されていた活弁付アニメーションのプログラムに偶然出会えたこと、他にもドワーフのコマ撮りの上映など普段見慣れたアニメーションとは違う表現に触れてアニメーションの多様さに気付かされた事を鮮明に覚えている。
今回はコンペティション作品を観て、どれも大なり小なり普段見慣れているアニメよりもアートに近いところが感じられて、商業と切っても切れないところにある日本のアニメーションというものが、特異であることが相対的に感じられた。
また、ほかトークイベントでは、コマ撮り、ロトスコといった傍流にあるアニメの制作方法について、改めてアニメーションという表現の広さを感じ、その他にもそういった制作手法の特徴、受け手の感じ方以外にも制作サイド側のメリットも含めて、どんな特徴があるのか、理解が一段と理解が深まり、非常に面白かった。

今日の一枚