メガネ属性≠負け属性

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リズと青い鳥

中身の面白さとは別に、観るのにエネルギーが要る作品とそうでない作品があります。
鑑賞するのにエネルギーの要る作品のなかでもかなり上位にある「リズと青い鳥」について、
自分の感じた「息のつまるような緊張感」はどこから来るのか?ということに焦点を当てて探ってみました。

リズと青い鳥」レビュー

リズと青い鳥」はテレビシリーズ「響け! ユーフォニアム」のスピンオフ作品である。テレビシリーズの主人公黄前久美子たちの一つ上の先輩である鎧塚みぞれと傘木希美のふたりに焦点を当てた作品だ。
本作はテレビシリーズの色鮮やかな情景から離れた、淡い水彩画のようなタッチが特徴的だ。その絵本のようなタッチは優しく幻想的な雰囲気がありながらも、少し張り詰めた緊張感が流れている。それははふたりの間に「別れの予感」が存在するからである。

リズと青い鳥」は作中に登場する童話の題名であり、またみぞれ達がコンクールで演奏する曲である。
ひとりぼっちで暮らしていたリズはある日、青い鳥助ける。その数日後、青い鳥は少女の姿でリズの前に現れる。リズは青い鳥の少女と暮らすようになり、幸せな生活を送っていたが、リズは少女の正体に気づいてしまう。リズは少女の正体に気づいたリズは青い鳥は人の中ではなく空の世界で生きるほうが幸せだと言い、少女との幸せな生活を手放し帰してしまうという話である。
自分にとって特別な存在である傘木希美を失うことを恐れているみぞれは「私がリズなら青い鳥を逃がさない」と言う。


別れとは悲しいイメージがつきまとっている。


希美との「別れの予感」を恐れているみぞれの繊細な心情は、ほんの少しの目の揺れ動き、表や音になるかならないかという微かなの息づかい、微妙に噛み合わない違和感ある会話など、細やかな表現で描写されている。この細やかなしぐさ、会話にフォーカスを当てるほどに高校三年生という時間が今しかないこと、ふたりの関係性が薄氷のように、もろく崩れそうであることを浮きだたせており、視聴者に息が詰まるような緊張感を与えている。

また、この作中には「リズと青い鳥」、鎧塚みぞれと傘木希美の他にも「別れの予感」が2つ描かれている。
ひとつはみぞれとその後輩の剣崎梨々花。梨々花は鎧塚みぞれと同じオーボエを担当する1年生。彼女は唯一同じオーボエ奏者としてみぞれを慕ってくれる後輩である。当初はみぞれの素っ気ない態度に梨々花は距離感を感じていた。オーディションに落ちてしまい、コンクールのメンバーとして一緒に演奏できないことを悲しむ梨々花の姿は、先輩後輩としての時期に卒業してしまうみぞれとの別れが待っていることを突きつける。しかし、梨々花の積極的に話しかけによって打ち解けたふたりの練習風景には優しい時間が流れている。
もうひとつは、物語の後半で演奏曲「リズと青い鳥」のソロをテレビシリーズの主人公である黄前久美子高坂麗奈がふたりで演奏しているシーンである。まだ2年生である二人もいずれ別々の道を歩く日がやってくることを想像させる。
この2つ「別れ」はふたりがお互いの気持ちを理解し受け入れている様子は、みぞれと希美とは対照的に安心感の感じるシーンに出来上がっている。

そして、物語の終盤でリズの心情が理解できないでいた鎧塚みぞれは、講師の新山のアドバイスで「リズにとって青い鳥が空にはばたくことが幸せであり、青い鳥はリズの幸せを叶えるために羽ばたくしかない」という青い鳥の心情を理解する。そして、いずれ来る傘木希美との「別れ」を受け入れる。しかし、その青い鳥の選択が青い鳥にとって幸せだったのかは分からない。
ただ、物語ラストでふたりの間に流れる穏やかな空気から察するに悲しい物語ではなさそうだ。

今日の一枚

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