メガネ属性≠負け属性

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話数単位で選ぶ、2023年TVアニメ10選

今年もaninadoさんが企画してくださっている「話数単位で選ぶ、TVアニメ10年」に参加させていただきます。
ルールは以下の通り。

■「話数単位で選ぶ、2023年TVアニメ10選」ルール
・2023年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。
・集計対象は2023年中に公開されたものとします。

去年の記事はこんな感じ。
wanwanfever.hatenablog.jp

【推しの子】 第1話『【Mother and Children】』

2023年のTVアニメシーンはどうだったか?と振り返ると、春の『【推しの子】』の初回90分拡大SP、夏の『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』の3話一挙放送、そして秋の『葬送のフリーレン』金曜ロードショー2時間SP。初回SPという見せ方、マーケティングの仕方の底が抜けた年だったと感じる。底が抜けた、という表現はちょっと否定的なイメージで適切ではない、また1つ新しいステージに変わったと言ったほうが合っているかもしれない。そんな潮流の嚆矢になったのは『【推しの子】』の成功があったのが大きいように思います。

毎クール数十本単位でTVアニメを観てる人たちからすれば2023年春クールは非常に面白い作品がたくさん放送された、2~3年にあるかないかレベルの豊作だったと感じるが、マスで見ると明らかに『【推しの子】』が頭一つ抜けてヒットを飛ばしていた。この『【推しの子】』のスマッシュヒットの要因はいくつかあるだろうが、星野アイという作中でも屈指の特異なキャラクターの退場までをこの初回90分で一気に描き、多くの視聴者に強烈なインパクト与えることに成功したことは確実に大きい。

実際には『【推しの子】』1話はそのまま劇場先行上映だったこともあり、純粋に1話を取り上げてこの企画に選出するのは少々ズルいもあるように思うがほとんど人にとって初見はTV放送だと思うのでここで選出します。

もういっぽん!#1『いっぽん!

すごい才能を持った主人公ではなく、平凡な柔道少女たちの等身大を描く部活ものという『もういっぽん!』という作品のスタンスをビシッと描いたこの1話を選出。
このエピソードの見どころは何といっても未知が一本を決めるシーン。ひとりで柔道部を復活させ、武道場に畳を運び込んでいた氷川永遠と剣道部のトラブルに巻き込まれた末に未知はきれいに永遠を畳にたたきつける。この綱引きからの投げ業までのワンシーン、永遠が投げようとしたところを未知が踏ん張り、投げ返すまでの足さばきをキレのあるカットで見せ、永遠が宙に浮いて畳に投げられるまでの瞬間をぐるりカメラが回り込み、一瞬大会で柔道を着た二人に切り替わる。そして、ズシンと畳打ち付けられて道場のみんなから宣言される「一本!」の掛け声。その後の「いっぽんの気持ちよさを思い出させないでよ...」と未知のセリフ、どう自分を取り繕ってもやっぱり柔道が楽しいという気持ちがこぼれ落ちてきているのがとこちらにも伝わってきます。

やっぱりね、どの競技でも大会優勝とか誰々に勝ちたいとかそういう勝ち負けとか活動の成果みたいものの前に、身体を動かして何かを成す、それ自体のプリミティブなところに楽しさ、面白さってあるはずなんですよ。私自身、学生時代に何かの運動の才能もなく、ひとつの事にのめりこむ根気もなかったけど、中学までやってた野球も大学時代にやってた居合道も、やってた身体を動かして楽しかったから続けられたという側面は大きかったと感じる。特に野球なんて、高校だとどんなに弱小でも甲子園目指す風潮が嫌いで入部すらしなかったですからね。だからね、柔道の気持ちよさ、一本の気持ちよさをまず描いた本作には心掴まされましたね。

BanG Dream! It's MyGO!!!!! #10『ずっと迷子』

主観視点で燈から見た世界を描いた3話、大成功のライブと決定的な亀裂を描いた怒涛の7話、そして、たった一話でバンドメンバーを再集結させたこの10話、どれも甲乙つけ難く1作品につき1話の選出がこれほど歯がゆいと感じたことはない。それでもこの中から一つを選べと言われれば迷いなく10話を選ぶ。バラバラになってしまったメンバーとまたバンドをするにはどうすればいいか?という問いにバンドメンバー5人をステージに無理やり引き上げてセッションさせて解決!そんな理屈をすっ飛ばして有無を言わさず着地させる作劇に心底ひれ伏してしまったから。

こんな展開が通じるのが音楽の力、バンドの力ではあるのは間違いない。でもそれだけじゃまだ足りなくて、歌うことは私の自己表現であるという燈の歌があったからだと思うんですよ。つまり、燈の歌なら届けさせられるんじゃないかって思わせられるものが無ければダメだと。そこにちゃんと説得力を持たせることができる声優を当てたこと、ここまでの物語で燈のキャラクターを提示したこと(もちろん他のバンドメンバーも)、それらが確かに積み重なって成り立ったエピソードだと思います。

夏アニメの感想にも書いたけど、この作品を観たとき、ED曲の「栞」を聞いたときにバンドリでこういう方向性の事をやるんだってビックリしたんですよ、訴えるような燈の歌声に。だからね、この燈の歌がしっかりと物語に活かしてきたこの話数はほんとにリアルタイムで観ていて震えましたね。

天国大魔境 #8『それぞれの選択』

原作4巻で描かれたこのエピソードは初めて読んだときからずっと印象に残っています。しかも、物語が進む折に触れては思い返さずにはいられない。なので、本作のアニメ化が決まった時に映像で一番観たいと思ったのも言うまでもない。
星尾が最後に空を見た時のシーン、屋上で星尾の亡骸を抱える宇佐美のシーン、そしてラストのミミヒメ、どこをとっても制作陣の宇佐美と星尾への愛が伝わってくる。
このエピソードは星尾との別離が中心にありキモではあるのだが、不滅教団とリビューマンの抗争も始まっていて、そんな大きなうねり、喧騒とは離れたところで宇佐美と星尾の別れが静かに行われる。この二つの出来事が同時に進むことで、どこかビルの下で起きている出来事に現実感のなさ、別世界の出来事のような感覚があり好きな所だが、この同時並行性が映像で描くことで時間という軸の中でくっきりと浮かび上がってきて、また原作の味を別メディアで味わう醍醐味を感じました。

BIRDIE WING -Golf Girls’ Story- Season2 #18『偽りとの決別』

「おおが付けすぎなのよおおおお!!」「バーディよおおおおお!」「おほほほほほ池ポチャだわ」
この回のMs.カトリーヌのガヤめっちゃ好き。こんなおもしろおばさんだったか?
唐突な回想でただリメルダに辛辣な言葉を浴びせるだけのレイ・ミラフォーデンも大好き。
そういう面白シーンが盛りだくさんだけど、この回を選出したポイントはそこじゃない。賭けゴルフと地下ゴルフ場、1期で印象的な舞台となった場所で、再度ゴルフ対決をするイヴ。相手は賭けゴルフ界の頂点に君臨するリメルダだが、イヴとイチナはリメルダの滑り粉を使った罠を見破り、これを難なく突破する。そして、イカサマの効かない2ホール目の1打目で畳みかけるように相手との実力差を見せつけ、試合の趨勢は決したと言わんばかりに流れるED。表の舞台でプロを目指すイヴにとって、偽物のゴルフなんて通用しない、イヴの場所はここじゃないと強く印象付ける。
ラスト「本物のゴルフをさせろ!」と叫ぶイヴに痺れました。

アイドルマスター シンデレラガールズ U149 第11話『大人と子供の違いって、なに?』

第3芸能課のユニット名「U149」が決まり、彼女たちに子どもというラベルを張り付ける名前に憤りを感じるプロデューサー、大人と子供の狭間で思い悩み揺れ動く橘ありすとを軸に描かれるエピソード。
アイドルマスターシンデレラガールズMobage時代から始まってもう10年以上の年月が経っても、ありすらアイドル達の歳は変わらないんですよね。そりゃそうだ、だって架空のキャラクターなんだもの。でも、デレマスの世界に生きるプロデューサーにとってはそうじゃない。彼女たちには未来が待っていると彼は信じている。そんな彼女たちの未来を狭めてしまうユニット名に疑問をぶつけてくるプロデューサーの言葉は私たち視聴者にも向けられるようでハッとさせられます。ここまでの話はプロデューサーが未熟で第3芸能課の子達を守る大人の役割ができていなかったので結構苦手でしたが、このエピソードのプロデューサーはトップアイドルにするという自分の夢とは切り分けて、彼女たちの未来を純粋に願い、もがいている姿が胸を打ちました。
物語の開始からありすの心象風景の中でありすは「大人は泣かない」とつぶやき、大人は夢を見ないものだと思っているわけだけど、大人のプロデューサーはこの回で泣いてばかりで、ありすと向き合って話すときも泣いていて、大人だけど夢を持っている。そんなプロデューサーの姿を見て、思いを知って、ありすは両親に自分の夢を、思いを、打ち明ける。そして、子供っぽいと感じていた自分の名前を呼ばれることを気にしないことにした、大人も子供も本当は一緒だからとプロデューサーに言う。
サブタイトルの『大人と子供の違いって、なに?』という問いを、ありすとプロデューサー二人の視点から描くことで、1つの答えを提示したこのエピソードは圧巻でした。

冰剣の魔術師が世界を統べる #7『世界最強の魔術師である少女は、魔術学院に潜入する』

『冰剣の魔術師が世界を統べる 』は、面白い作品って当たり前だけど作画のリッチさじゃないんだよなと気づかせてくれる作品。
この面白さはしっかりと原作を理解して、面白い映像とは何かを理解しながら組み立てていかなくては出来上がらないものだと思います。
映像の組み立てや演出などで計算された面白さを味わえる作品ですが、レイの女装と声の切り替え、水着シーンのカット、EDの入りの自由さなど7話は特にテレビアニメのお約束をうまく逆手に取りながら、笑いを提供してくれました。
まるで劇場版みたいと形容されるようなリッチな作画のアニメは確かに見応えがある。しかし、映像作品を観ているからにはこういった映像の組み立てでしっかりとエンタメを成立させる作品出会えると嬉しい。

君は放課後インソムニア#10『姉はん星』

私はね、ユーフォの黄前姉妹とか、こういう仲が良いだけではない姉妹、兄弟の話に弱いんですよ。だって、自分自身がそうだったから。
そりゃそうですよ、物心がつく頃にはもう一緒の家に住んでいる1番身近な他人なんだから、良い所よりも嫌な所のほうが嫌でも目に付く。親は基本的に自分の味方になってくれる存在だけど兄弟はそうじゃない。むしろ、反発しあうことの方が多いかもしれない。だけれども、親よりも長い付き合いになることが決まっているから好き嫌いだけじゃなく、色んな面を見ながら自分の中で折り合いをつけていく必要が出てくるわけで。

曲姉妹も基本的には仲が良いように見えるけど、お互いに日々の不満を持っている。病弱な妹に家族の予定全てを優先されて、親も妹の世話ばかり見ていて、体が弱いのは伊咲のせいじゃないけれど、やっぱりズルいと思ってしまうもの。このエピソードでは姉視点で見た伊咲が描かれていたけれど、そうは言ったって伊咲から見たら恐らく姉だってズルい羨ましいと感じる部分はあったはずで、姉だけじゃなく妹にも、お互いに思うところがあるのだと思う。
このエピソードではそういう曲姉妹の積み重なった感情が見え隠れしていて好きなエピソードです。

吸血鬼すぐ死ぬ2 第12話『新横浜の楽しいバカ野郎たち スペシャルver.』

毎年色んなアニメ観てるけど、最近はコメディが一番好きだなって。コメディってジャンルは面白い面白くないが全てなので分かりやすいんですよ。評価軸がそこだけなので逃げ道がないんですよ。でも、逆に面白く出来ればどんな手も使ってもいい、自由さがある。『吸血鬼すぐ死ぬ』はどんな展開も起こりうる設定で、展開の自由度が高い作品で好きなんですけども、この最終回のBパートはロナルド、ドラルク、それとジョンのメイン2人の1匹だけの空間で、ショートギャグの連発で締められる。いつもの賑やかさとか勢いではなく、真正面から笑いを取りに来て締めくくるそこが良かったですね。

君のことが大大大大大好きな100人の彼女 第11話『この命にかえても』

ということでさっきはコメディが一番好きとか言ったけど、もっと詰めるとラブコメの方が好きです。正しくラブとコメの両輪が機能しているラブコメ作品。そういう意味で『君のことが大大大大大好きな100人の彼女』はかなり面白かったですね。
その中でもこの10話は恋愛成分とコメディ成分がどちらも非常に見応えのある回でした。羽香里を連れ戻すために花園家へ忍びこんだ前話の続きとなるこの話で、羽香里と対面するシーン。母親の束縛から一生逃げられなくなると言う羽香里に対して、羽香里がいない人生の方が不幸になると言い切る恋太郎。そしてそれに応える羽香里の泣きの芝居、1度目は手のひらで2度目は指先で涙をぬぐう仕草が艶がありハッとさせられました。そしてもう一つ、その後に唐音が羽香里を叩いて「バカ」と言うシーンの唐音の表情、怒った表情から「バカ」と言い終わるときには今にも泣き崩れそうな表情になっていて、これもうわっ...良いなぁここの芝居と思いましたね。
そんなグッとくるシーンの前後にウソ発見器のアホみたいな茶番があったり、本編で言及していた特殊EDが羽々里が買い取ったEDで、「茶番で無駄にした尺を返せ」に対して「EDなんて削ってしまえばいいじゃない」と言った羽々里のセリフがここでもオチに繋がるあまりの自由さに笑わせてもらいました。
ところでEDを買い取るって何?そんな概念あったの??いや、お前が買い取ったEDなら、EDなんて削ってしまえばいいじゃないなんて暴言も許されるのか??

選外候補

  • ワールドダイスター 第三場『初めての舞台』
  • 私の百合はお仕事です シフト10『こわしてしまうのですか?』
  • 蒼穹のファフナー THE BEYOND 第6話『その傍らに』

雑感など

去年も書いたけど、どういう基準で選出するかやっぱり悩みましたね。
基本的には色んな評価軸で選出したいという考えですが、あえて評価軸を絞って個性を出したいという思いもあったりして。
最後は後でこの記事を自分が見たときに2023年ってこういう年だったよねって感じられるものになっているかを見て10本選びました。
呪術廻戦を見よう見ようとしているうちに結局全く見れてないのが、心残りなのですが...
今年は毎クールで1つは確実に狙いに来ているなってリッチな作品があるような気がします。それゆえにハイクオリティな作画、画作りというものがワンオブゼムになって、リッチな画自体の価値はサチっているような気分があります。
やはり、映像作品なので、そこに力を入れる作劇上の理由、リッチな画作りが効果的に作用する作風なのか、とかとかそういった理由が見えてくると、作品の続きがみたいなという気持ちにさせてくれます。

今日の一枚


MFゴーストで出てきたので去年ドライブしに行っ芦ノ湖スカイラインの写真をば